私たちは、<意味と知識>のウェブ技術を使って実務の効率化をめざすグループです。不定期に勉強会を開催しています。
○ HTMLから意味と知識の技術へ
HTML5 というとCSS やJSなど、UI/UX に直接むすびつく技術がさかんに取り上げられています。反面、核となるHTMLはそれほど話題になることがありません。たしかにマークアップ言語は守りつづけるための規則でしかなく、プログラミングによって日々生まれる新たなライブラリやサービスほど注目を集めることはないといえます。
でもHTMLの<意味づけする>という特徴を足がかりに、その先にあるものをみていけば、驚くほど高度で豊かな世界が広がっていることが分かります。たとえば:
・ 構造化文書、オントロジー、セマンティックウェブ、リンクトデータ、構造化データ、ナレッジベース、宣言型プログラミング、文書変換、……
・ XML, RDB, NoSQL, RDF, OWL, Microdata, RIF, CL, Haskell, Prolog, XSLT, ……
これらはすべて、文書のセマンティクス(意味と知識)にまつわる有用な技術です。
○ 世界中のヒトと機械をつなぐデータのウェブ
とくに近年注目されているのが、ウェブの共通言語(ヒトと機械の世界共通語)といえるRDF/OWL です。各国政府のオープンガバメント/オープンデータ化の流れのなかで、テキストコンテンツのRDF/OWL 形式への移行が精力的に進められています(「リンクトデータ」運動)。また検索エンジン各社からは、HTMLに詳細な意味をもたせる構造化データの仕様がMicrodata として示されました。さらにこれら「データのウェブ」の推進とともに、「ルールのウェブ」の交換言語としてRIF (推論のためのロジックとプロダクションルールの共通語)も勧告されています……すでにウェブ上では、世界中のヒトと機械が<意味と知識>を共有できる環境が整っているのです。
これらの技術にくわえ、私たちは独自の文書構造づくりの参考となる構造化文書技術/データベース技術(XML, RDB, NoSQL )、文書変換に適している宣言型/関数型プログラミング言語(XSLT, Haskell )についても学んでいます。そしてすこしだけ数学(圏論)と哲学(分析哲学)についても。
○ 意味と知識の技術は、ウェブの実務を極限まで効率化する
これだけではずいぶん抽象的な話だなと思われるかもしれません。じつは文書の<意味と知識>の技術は、ウェブの実務、たとえば検索エンジン最適化(SEO )、コンテンツ管理システム(CMS )、ウェブアプリケーションの反復型開発(IID )などさまざまな領域で、効率化を極限まで追求する手段を提供してくれるのです……なぜなら効率の追求は、必然的に知識の明示化/共有化につながるからです[※1]。
とくに反覆型開発の効率化は、ウェブの利用者に対するUI/UX 検証の精度をギリギリまで高めてくれます。これはウェブでリーンな開発サイクルをめざすスタートアップだけでなく、一般ユーザ向けにウェブサービスを提供する企業や、社内ユーザを相手にする情報システム部門にも必須の要件となります。
みなさんもHTMLを足がかりに、ウェブ文書の<意味と知識>について勉強し、実務の効率化を極限まで追求しませんか?
※1]とはいえ私たちの目的はあくまで実務にあるので、研究よりは開発レベルの話が中心になります。基本的にはXML 文書をXSLTやHaskell などで目的の構造に変換する、イベント駆動型/非同期アプリもあるので命令型(オブジェクト指向)プログラミング言語(JS, Ruby, etc.)も活用する、など……それでも業務の基盤となるドキュメント/データベースの構造設計ではセマンティックウェブへの対応を進めるなど、現状と将来のバランスを考えながら日々対応しています。